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紫外線関係ニュース
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朝日新聞社夕刊「にゅーすらうんじ」より
「ルポ 太陽から逃れて 豪の紫外線対策」連載記事

Newspaper:Asahi Shimbun(E)
Date:6June,1996
Page:3
Circulation:Daily 4,439,159


屋上からはしごで塔屋に登ると、青空の下に市街地が広がった。豪大陸の南にある島、タスマニア州ホバート市。タスマニア大学に据え付けられた紫外線の観測機器をマイケル・カルビン博士が見せてくれた。

全天の雲の量を測る装置も設置されている。新鋭機器の傍らの手すりに、あぶったように焦げてボロボロになったゴム手袋が縛りつけられていた。「太陽にさらし続けたら、どうなるか試したんだ」


◆海洋生物に影響?

南と北の違いはあるが、タスマニアは日本の北海道とほば同じ緯度。高緯度地方は、日光が大気の層を斜めに横切り地表に到達するため、日差しは弱い。さらに、オゾン量はもともと緯度が高い地方の方が多いので、紫外線量は少ない。

しかし、高緯度の方がオゾン層の減り方が激しい。日本では、札幌上空のオゾン量が、一九九五年までの十年間で五・一%減っている。

ホバート上空のオゾン層も九○年までの十年で五%減少、有害な紫外線Bは一 一・二%増えた計算だ。

ブリスベーンではオゾンが二・五%減り、紫外線Bが四・五%増えたのに比べると、南極のオゾンホールの影響があるようだ。

カルビンさんは「タスマニアの近くにも小さなオゾンホールが短時間できて、生物が影響を受ける可能性はある」と話す。- プランクトンと紫外線の関係を研究している。「紫外線が多くなるとプランクトンは減るが、対応できる種類もいるので、結果として海洋のプランクトンの構成が変わる」。食物連鎖の底辺にいるプランクトンの変化が海洋生物全体に与える影響を心配する。

昨年、南極で起きたペンギンのひなの大量死も紫外線の増加でえさのオキアミが減ったためだ、と環境保護団体は指摘する。しかし、連邦政府南極局のハービー・マーチャント博士は、ペンギンの死が南極全体の現象ではないことから、オキアミの減少は海洋汚染や乱獲の影響ではないかと考える。


◆生活の変化も一因

紫外線Bが二%増えると、皮膚がんは三%から四%増加するといわれる。紫外線による免疫機能の低下は人種によらず同じ影響を受けるとされるが、紫外線が人間やほかの生物にどれだけ影響するかはいろんな要素がからみ、定量化は難しい。

ホバート市にある住民医療を研究するメンジーズ基金のテレンズ・ドウヤー教授は、紫外線を浴びた量や体質と皮膚がんの関連を研究している。「タスマニアより緯度が低い東京の方が紫外線が強いはずだが、ここの方がメラノーマ(悪性黒色腫)の発生率は高い」と話す。

確かに、緯度がほば同じメルボルン(南緯三七・八度)と茨城県つくば市(北緯三六・○度)を比べると、メルボルンの夏の紫外線Bの量は、つくばの過去最高値と比べても一割以上高い。

しかし、がんの発生率が高い理由はそれだけではなさそうだ。多くの研究者は、紫外線が弱い英国などから移民した人が多いことを指摘する。さらに、余暇で野外活動を楽しむ国民性、野外で肌を露出するようになった生活習慣の変化の影響も付け加える。

ドウヤー教授らは、定量化するためデータの蓄積を進めている。ボランティアの被験者の手の甲に紫外線量を測るフィルムを張り、日常生活でどの程度浴びたかを調べる。肌の色も測定する。色素を調べるために腕から直径五ミリ、深さ五ミリの皮膚のサンプルも採る。傷が残るが、昨年は百五十人のボランティアが集まった。


◆売れ行き予想以下

オゾン層も紫外線もフロンガスも目に見えないだけに実感しにくい。市民も紫外線から身を守ることには熱心だが、オゾン層の破壊を防ぐことにはあまり関心がない。

例えば、シドニーの電気メーカー、イーメイル社は、炭化水素を冷媒に使い、まだ規制されていないものも含めフロンガスを一切使わない冷蔵庫を発売した。百四十リットル(市価四百ドル)のもので普通のものより一割ほど高いが、冷却効率がよくて電気代が抑えられ、四年以上使えば割安だ。しかし、予想よりも売れ行きが悪い。

製造担当部長のイアン・リンカーンさんは「がっかりしたよ。環境問題に関心を持つ人も増えたが、買うとなると消費者は安い方を好むようだ」と分析しながらも、「最近は製品の知名度もあがり、販売数も少し増え始めた」と期待する。(おわり)




地表に届く紫外線 紫外線は、可視光線に近い、波長の長い方からA、B、Cと三つに分けられる。
地表に到達する紫外線の九割以上を占めるのがA。
生物への影響は比較的小さいが、ガラスも通過して室内にも入り、浴び続けると皮膚の老化が速まったりする。
紫外線Bはオゾン層などで吸収され、地表にはあまり到達しないが、皮膚細胞の遺伝子を傷つけたり、皮膚がんをできやすくしたりする。紫外線Cは、地表には普通は到達しない。オゾン層が一%破壊されると、地表に届く紫外線量は一・五から二%増加する。



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1996年6月3日分
1996年6月4日分
1996年6月5日分
1996年6月6日分



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